金沢医科大学で公衆衛生学を研究する西条旨子准教授は、医学誌である「Molecular Psychiatry」に、ベトナムの旧アメリカ軍基地などの汚染された地域で生育された子どもについての調査結果が発表しました。
ベトナムの旧アメリカ軍基地の周辺地域に住む人々は、ダイオキシンの体内蓄積量が、枯葉剤散布後40年以上も経った今でも高いのだそうです。
そこで西条准教授は、汚染された地域で成育された153人の子どもを調査しました。
この研究では、まず、子どもが生後1ヶ月の時点で母親の母乳中にあるダイオキシンの濃度を測定します。
そして、子どもが3歳になった時、母親に、子どもの自閉傾向の有無を確認する質問が70項目あるアンケートを行いました。
c
その結果、ダイオキシンの種類中でも毒性が強いと言われている、TCDD(四塩化ダイオキシン)が母乳中に含まれる濃度 が高いほど、子どもの意思の疎通や社会性に自閉症傾向が目立って存在していることがわかりました。
一方で、言語機能や認知 など、一般的な脳神経の発達には影響がありませんでした。
自閉症の傾向とダイオキシンを関連付ける研究は、世界で初の試みとのことです。
ダイオキシンによって、脳に何らかの障害をもたらしているということでしょうか。
後の世代まで影響をもたらしているベトナム戦争時代の枯葉剤ですが、2012年、アメリカ政府が4300万ドルを出して、枯れ葉剤の除去作業を始めたそうです。この作業は4年がかりで行われるそうです。
今まで多くの被害者を出し、さらに遺伝子異常によってこれからも被害を出し続けるにもかかわらず、除去作業にようやくとりかかったのが2012年という遅さ。
除去作業の対象となっているのは19ヘクタールと言われていて、除去作業を要する場所のほんの一部分にすぎないのだそうです。
ベトナム住民の人々が希望を見出せる日はまだまだ遠いですね。
そして日本でも、沖縄で枯葉剤が入っていた可能性の高いドラム缶が数多く発見されており、在日米軍がベトナム戦争での使用を前提として、沖縄に試験的に散布していたという証言も出てきて、他人事とは言えない状況にあります。
ベトナム戦争の爪痕は深く、私達はいつまでも枯葉剤の影響に脅かされていますね。
真相 日本の枯葉剤 日米同盟が隠した化学兵器の正体
関連記事(1):自閉症の対人コミュニケーションがホルモン投与で改善
関連記事(2):自閉症の顔の特徴とは(ミズーリ大学の研究)
関連記事(3):女の子は男の子よりも自閉症の診断が確定しにくい(ロンドンカレッヂの研究)