今日のNHK クローズアップ現代は、「戸籍のない子どもたち」というテーマでした。
日本では毎年、「無戸籍」になる人が500人以上はいるといわれています。
戸籍がないと、医療費が高額になり、病院にかかることもできず、学校に通うこともできません。
部屋を借りられないので、住む場所も働く場所も限られてしまい、苦しい人生を歩むことになります。
こうした「無戸籍」の背景には、DV(ドメスティックバイオレンス)が原因となったいることが多いのだそうです。
夫の暴力から逃れ、夫に居場所が知れてしまうのを恐れ、離婚もできないような状態で、新たなパートナーとの間に子供が生まれる場合は、生まれてきた子は夫の戸籍に入るしかないのが日本の法律です。
そのため、母親が出生届を出せなくなり、子どもが無戸籍になるのだそうです。
番組では、戸籍がないまま32年間もの長い間を過ごしてきた女性、ヒロミさん(仮名)を取材していました。
ヒロミさんは、お母さんが夫のDVから逃れていたときに支えてくれた男性との間に生まれた子供です。
ヒロミさんのお母さんは、ヒロミさんが生まれた3年後に夫と離婚します。
やがてヒロミさんの実の父親とも別れることになり、お母さんは1人でヒロミさんを育ててきました。
ヒロミさんのお母さんは必死に行政に掛け合い、どうにか中学校までは通わせることができました。
お母さんはさらに、「戸籍を作ってほしい」と行政に何度も懇願しましたが、ヒロミさんが誕生したときに離婚が成立していないので、前の夫の戸籍に入るか裁判をするしか道はないと言われ、諦めたということです。
ヒロミさんは親戚の人の名前を使ってアルバイトをしています。
真面目さを買われて何度も正社員になることを打診されますが、戸籍のないことを知られるのを恐れて断り続けています。
友人宅に住まわせてもらい、携帯電話も友人から借り、健康保険証も作れないような状況に、「もうこれ以上は無戸籍のままで生きていきたくない」とヒロミさんは強く思います。
そんな中、昨年の秋に、ヒロミさんは「無戸籍児家族の会」という支援団体の存在を初めて知ることとなり、相談します。
弁護士の職権を使って調査をした結果、母親にDVをしていた前の夫が2年前に死亡していたということがわかり、支援団体に紹介された弁護士を通じてヒロミさんは裁判を起こすことを決めました。
ヒロミさんは、一歩前に踏み出せたことで、「やっと普通の生活になれる」と涙を流しながら希望を見出していました。
以前住んでいた家の近くでよく見かけたのですが、子供が学校へ行っているような時間帯に、昼間、いつも同じ公園で遊んでいる小学校中学年くらいの背丈の男の子がいました。
そのときは不登校なのかな、とも思っていたのですが、よく考えると無戸籍を理由に学校へ通えない子という可能性もありますね。
私たちの身近なところにも、無戸籍の人がひっそりと生活しているかもしれません。
「無戸籍児家族の会」のブログを拝見しましたが、「乳幼児検診を受けることができず、発達障害の発見が遅れた子もいる」と書かれていました。
無戸籍の子が障害のある子だったら、療育などの福祉も受けられず、さらに深刻な状況となっていそうです。
国の制度や法律が変わって、親の事情で行政サービスを受けられないような状況が改善されるとよいですね。
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